土田博士
「今日はキャラクターを『立てる』方法を考えてみよう」
まり子ちゃん
「キャラクターを『立てる』ってどういう意味ですか?」
土田博士
「ちょっと抽象的な言い方になっちゃうけど、
『特徴を際立たせる』ってことかな。
例えば『お金が大好き』ってキャラなら、このキャラはお金が大好きなんだぞ、というのを、読者に分かるように行動で示すことが、『キャラを立てる』ということになるね」
まり子ちゃん
「『お金が好きだ』というのを、
極端に描くことが、『キャラを立てる』って事なんですね」
土田博士
「その通りなんだけど、ここで一つ、素人が陥りがちな落とし穴があるんだ。キャラを作る際に、
同じキャラは2人いらない、ってことなんだ」
まり子ちゃん
「?? どういう意味ですか?」
同じキャラクターは2人いらない
土田博士
「せっかく『お金が大好き』という主人公を作ったとするよ。なのに、主人公の友達も、ライバルも、ヒロインも、みんなお金が大好きだったら、どうだい?」
まり子ちゃん
「なんか、みんな同じじゃ面白くないですね」
土田博士
「そう。みんなお金が大好きじゃ、せっかくの主人公の『お金が大好き』という特徴が、目立たなくなってしまうんだ。これじゃあキャラクターが『立たない』ね。
主人公だけじゃマンガは成り立たないのは言うまでもないけど、周りのキャラクターが、主人公と同じじゃ駄目なんだ。主人公と違うキャラクターがいるからこそ、主人公のキャラクターが『立って』、面白くなるんだ」
まり子ちゃん
「でも、そんなの言われるまでもなく、当たり前のことじゃないですか」
土田博士
「ところが、新人賞に応募してくるようなマンガの中には、結構あるんだ。
特に多いのが、主人公の仲間が、主人公と同じ性格になってしまっている、というパターンかな。
主人公だけ作って満足しちゃったのか、主人公の仲間が、主人公と同じように行動して、単に主人公の2Pキャラみたいになっちゃってるマンガは多いんだ」
まり子ちゃん
「うーん、確かに言われてみると、主人公だけ作って、他のキャラのこと、あんまり考えてなかったような気がします」
土田博士
「そこで今回のテクニック、『主人公と真逆のキャラを作れ』って話になるんだよ」
真逆のキャラクターの実践例
土田博士
「この『真逆のキャラクターを作る』というのは、多くの漫画、いや、殆どすべてのプロのマンガが実践している、基本中の基本テクニックと言っていいよ」
まり子ちゃん
「具体例を見せてくださいよ」
土田博士
「まずは『スラムダンク』を見てみよう」
『スラダン』の中心は、この桜木花道と流川楓の2人だ。この2人の特徴を書き出してみると、
|
桜木 |
流川 |
バスケ |
素人 |
上級者 |
女の子に |
モテたいけど
全然モテない |
興味はないけど
モテモテ |
顔 |
ヤンキー面 |
イケメン |
しゃべり |
よく喋る
自分で自分を褒める |
無口
不言実行タイプ |
など、いろいろ真逆の特徴があるね」
まり子ちゃん
「バスケ素人でモテない桜木君と、全く逆にバスケ上級者でモテモテの流川君を出すことで、桜木君が素人でモテない、というのがより際立ちますね。これがキャラを『立てる』ってことですか?」
土田博士
「その通りだよ。2人とも背が高いとか、喧嘩が強いとか、共通の特徴もあるけど、こういう真逆の特徴が、2人のキャラクターを立てているね。
他にも同じような例はいくらでもあるから、もうちょっと見てみようか。
大ヒットしてアニメにもなったラノベ『とらドラ』。これはラブコメで、主人公2人にはこういう特徴があるよ。
|
竜児 |
大河 |
性別 |
男 |
女 |
顔 |
超怖い |
かわいい |
家事 |
得意 |
壊滅的 |
性格 |
几帳面
世話焼き |
ずぼら
自己中
凶暴 |
家庭 |
片親
良好な関係 |
両親あり
家族仲最悪 |
ラブコメのメインキャラ2人が真逆の性格というのも、ラブコメの王道だよね。
この「真逆」の例は無限にあるから、色々探してみよう。
|
両津 |
中川 |
顔 |
ブサイク |
イケメン |
身長 |
低い |
長身 |
女性 |
嫌われ者 |
モテモテ |
金 |
貧乏人 |
超大金持ち |
|
黒子 |
鏡 |
性格 |
無口
存在感がない |
熱血
存在感の塊 |
口調 |
ですます調 |
敬語苦手 |
身体能力 |
背が低い
運動能力低い |
背が高い
運動能力最高 |
属性 |
影 |
光 |
|
山田太郎 |
岩鬼正美 |
性格 |
温厚
まじめ |
喧嘩っ早い
めちゃくちゃ |
野球 |
基本に忠実 |
でたらめ |
家 |
貧乏
両親無し、妹あり
家族仲良好 |
大金持ち
両親、兄あり
仲は良くない |
しゃべり |
標準語 |
関西弁 |
|
ラッキーマン |
追手内洋一 |
運 |
宇宙一ラッキー |
日本一ついてない |
口癖 |
ラッキー |
ついてね~ |
みっちゃんに |
モテモテ |
嫌われてる |
です代に |
嫌われてる |
モテモテ |
こういう風に、真逆のキャラクターを作ると、主人公と同時にもう1人のキャラクターも立てることになるから、一石二鳥だね」
まり子ちゃん
「でも博士、真逆のキャラを1人作っちゃったら、後はどうすればいいんですか? もう終わっちゃうじゃないですか」
土田博士
「そんなことはないよ。何も、1人のキャラで、全てをすべて真逆にする必要はないんだ。
例えば、『こち亀』の両さんと中川が真逆の関係にあるというのはたった今見たけど、同時に部長は、「不真面目⇔真面目」、「遊び好き⇔遊ばない」など、中川とは別の点で両さんと真逆の関係になっているんだ」
まり子ちゃん
「主人公の特徴が、例えば10個あったら、脇役Aは、5つ主人公と真逆にして、脇役Bは、残りの5つを真逆にする、という風に作れば、キャラクターが複数作れるってことですね」
土田博士
「のみこみが早いね。
まずは、主人公の特徴を出来るだけだくさん書き出してみよう。そして、キャラクターを作るときに、最低1つは主人公と真逆な特徴を打ち出すようにすると、脇役のキャラクターも作りやすくなるよ。そして、そのキャラクターがメインキャラであればあるほど、主人公と真逆の点を増やすといいよ」
まり子ちゃん
「じゃあ、『お金が大好き』で『イケメン』で『ファンキー』な『魔王』が主人公なら、『お金が嫌い』で『不細工』で『まじめ』な『勇者』をライバルにすればいいんですね!」
土田博士
「君は一体どういう漫画を描くつもりなんだい…?(汗)」