ハインツのジレンマ
土田博士
「まり子ちゃんは『ハインツのジレンマ』って聞いたことあるかい?」
まり子ちゃん
「ありません!」
土田博士
「偉く強く宣言したね…。いや、別に知らなくてもいいんだけどさ。『
マンガでわかる心療内科』の第6巻に載っているから、読んでみるとよいよ。
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まり子ちゃん
「それがどうかしたんですか?」
土田博士
「『ハインツのジレンマ』の細かい話はおいておくとして、今回は『モラル』に基づいてキャラクターを作ってみようって話だよ」
モラルの4段階
土田博士
「この『ハインツのジレンマ』では、モラルには4段階ある、と言っているんだ。
レベル1.個人の損得しか考えない
レベル2.法律や社会を重視する
レベル3.自分の信念
レベル4.ケアの倫理
簡単に説明すると、悪いことをやってもバレなきゃいい、とか、警察に捕まりたくないから盗まないとか、自分の即得で行動を決めるのが、レベル1の『自分の損得しか考えない』。身勝手な考え方だね。
レベル2の『法律や社会を重視する』というのは、自分の考えというより、『法律が定めているから、ダメなものはダメ』という考え方。正しいけれど、融通が利かない頭でっかちってところかな。
レベル3の『自分の信念』とは、法律や、他人の考えも理解したうえで、自分が正しいと信じる信念に基づいて行動することだよ。
レベル4の『ケアの倫理』は、『いい』『悪い』という思考を超えて、皆が幸せになれる方法を考えること」
まり子ちゃん
「これがキャラクターづくりにどう関係するんですか?」
土田博士
「これに基づいて、キャラクターのモラルレベルを考えてみようってことさ。
大したことない悪役なら、レベル1の個人の損得しか考えないに設定してみたり、学級委員キャラをレベル2のルール重視の頭でっかちにしてみたり、このモラル段階を踏まえてキャラクターを作ると、すこしキャラクターが作りやすくなるよ」
まり子ちゃん
「そういえば、3の『自分の信念』なんて、すごく主人公っぽいですね。ルフィみたい」
土田博士
「ルフィなんかはまさにレベル3の『自分の信念』に基づいて行動するキャラだね。多くの少年マンガの主人公はレベル3だと思うよ。ギャグマンガだと、あえてレベル1にしたりレベル2にしたりすることで、笑いを誘うことも多いね」
まり子ちゃん
「レベル4のキャラクターはいますか?」
土田博士
「そうだね。例えば『
マギ』のアラジンは、敵も含めて、全員が助かる道、幸せになれる道を見つけようとしているから、レベル4のキャラクターだろうね。
同じ『マギ』の登場人物でも、アリババはレベル3の『信念』のキャラクターかな。彼は、自分の信念に基づいて、盗賊になっていたこともあるぐらいだからね」
まり子ちゃん
「そうやって具体例を見てみると分かりやすいですね」
土田博士
「敵キャラも、レベル1の自己中なキャラが多いけど、レベル3の信念に基づいた敵なんか出てくると、大物っぽいよね。
『
HUNTER×HUNTER』のメルエムは、最初は完全に自分の欲望だけのモラルレベル1のキャラなんだけど、コムギというキャラに出会って、モラル3、モラル4と変わっていくんだ。敵なのに、主人公サイド以上に大物感があるキャラクターだったよ」
モラルレベルを成長させよう
土田博士
「今、『HUNTERxHUNTER』のメルエムが成長した、という話をしたけど、モラルレベルが上がると、キャラクターの成長が感じられるよ。
例えば『
スラムダンク』の桜木花道は、最初は完全に自分勝手なレベル1の自分勝手なキャラなんだ。それが、ストーリーの後半になると、自分勝手なそぶりはなくなって、信念に基づくキャラになり、最後にはチームの勝利のために身を犠牲にして戦える、レベル4のキャラに成長しているよ。『スラダン』が最も感動的なのは、この桜木君の成長になると言っても過言ではないよ」
まり子ちゃん
「そういえば、最後の山王戦で、『あいつ、大人になったな』『いや、そうじゃねえ、バスケット選手になっちまったのさ』って台詞がありましたけど、『バスケット選手になった』っていうのは、自分勝手じゃなく、チームの勝利のために戦うキャラになったってことだったんですね」
土田博士
「漫画において、キャラクターが『成長する』とは、今日紹介した『モラルレベル』が上昇する、という意味だと考えて差し支えないよ。キャラクターの成長は感動を生むから、是非このモラルの4段階を利用してみてね」
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